研究概要 |
繊維強化複合材料を対象としたマイクロメカニックス研究によって、次の二つのテ-マの解明を試みた。 1.宇宙環境温度下での炭素繊維強化複合材料(CFRP)の損傷と強度低下 耐熱エポキシ樹脂を母材とするCFRP直交積層板を用いて、宇宙環境温度下(423K,298K,77K)でAE法を併用した破壊靭性試験を行い、その結果を詳細に検討して、損傷機構を再構築し、コンピュ-タ・シミュレ-ションを行った。得られた主な知見は以下の通りである。(1)AEエネルギ-の急増開始荷重から算出した破壊靭性値と5%オフセット荷重より求めた破壊靭性値は共に室温で最も大きく、低温および高温においてはより小さくなった。(2)コンピュ-タ・シミュレ-ションにより得られた巨視的き裂進展開始直前までの荷重ー切欠肩部開口変位曲線は、破壊靭性試験により得られたそれときわめてよく一致した。(3)繊維束のはく離応力および引抜け長さにばらつきを与えて、巨視き裂の進展ー停止挙動のコンピュ-タ・シミュレ-ションを行った結果は、実験におけるセレ-ション現象をよく説明した。 2.酸環境下でのガラス繊維強化複合材料(GFRP)中のき裂進展速度 ガラス繊維を強化材としエポキシ樹脂を母材とする直交積層板を用いて塩酸環境下で応力腐食によるき裂進展実験を行った。(1)その実験結果からき裂進展速度は、近似的にき裂先端での応力拡大係数のべき乗形で表わされることを確認した。(2)さらに、き裂進展機構を解明し、き裂進展の律速過程をマイクロメカニックス的観点から再構築して、き裂進展速度に関する理論式を導出した。その理論式を用いて、塩酸濃度、環境温度、繊維体積含有率等の影響をふまえた、き裂進展速度ー時間関係のコンピュ-タ・シミュレ-ションを行った。コンピュ-タ・シミュレ-ション結果は実験結果とよく一致した。
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