研究概要 |
境界要素法における数値計算の誤差は,1.数値積分誤差,2.形状補間誤差,3.離散化誤差の3つに分けることができる.1と2の誤差は既知関数が対象となるので,誤差評価は比較的簡単である.しかし3の離散化誤差の評価は未知関数を対象とする(すなわち,正しい値が不明)という意味で本質的な困難さを伴う.本研究ではこの離散化誤差を対象とし,誤差を見積り,自動修正しながら解析を進める方法の開発を目的とする. 本研究で開発した方法は,何らかの方法で解が収束しているか否かを判断し,収束していない場合には再計算をして判定を繰り返す,という方法である.すなわち,真の解は不明であるから,許容範囲内で収束した解を真の解の代わりに用いて,収束していなければ誤差を含んでいるとみなし,再計算を行う.そこで問題は,得られた解に対してそれが収束しているか否かを判定する方法の開発に帰着する.本研究ではまずこの方法として,1.節点に移動して再計算を行い解の変動を調べる方法,2.要素を再分割して再計算し解の変動を調べる方法に大別し,それぞれの特徴を調べた.その結果,前者はすべての要素の中間節点を移動しなればならなずマトリクス再構成に時間がかかること,及び再計算した結果は次のステップになんらの有効なデ-タとはならず,非常に無駄が多いことが分かった.一方,後者は,最初のステップでは必ず2回計算が必要であるが,変動の大きい要素のみ細分すればよいのでマトリクスの再構成時間が短いこと,及び再計算した結果は次のステップへの有効なデ-タとなるため無駄がないこと,などが分かった.また,実際のシステムでは,筆者が別途開発した,デ-タベ-スからマトリクスを構成する方法を組み込んだ.この方法は,マトリクス再構成の時間を大幅に減少させること,及び1と2の誤差が混合しないこと,の2つの点で大きな効果をもたらすことが分かった.
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