研究概要 |
現在射出成形によって製作される精密光学部品の代表例としては光ディスクがあるが,超精密とされる回折格子またはこれに準じる製品についても射出成形の精度が向上すれば将来成形の対象になる可能性は大きい.そこで,本研究では円板はたは矩形板のような単純なモデル形状の成形について局部的な圧力不足によるひけ,気泡の残留,フロ-マ-クなどの各種要因の影響を実験的並びに解析的に検討し,射出圧縮成形における適正な成形条件を示した.得られた結果を以下に要約する. 1.まず,バ-フロ-形式のガラス窓を有する金型を製作し,アルミニウム粉末をトレ-サとして用い溶融樹脂の固化層の成長過程を実験的に明らかにした.ここで金型面近傍の流れを拡大,撮影するためにシ-ト状の光を大きな入射角で樹脂内へ照射する必要があるが,照明光用のガラス窓を観測用の窓と直交させ別個に配置することによってこれを実現した. 2.バ-フロ-形式の金型に圧力センサを埋め込み実際の金型の射出速度及び射出圧力における成形を行って,固化の進展を金型圧力分布から推定する方法を示した.またその推定結果が上記1.項の観測結果とほぼ一致することを確認した. 3.円板の成形について固化層の発達が過大になる前の段階で金型内圧力を均一化することが,形状の平面性と同時に転写性を向上させるために必要であることを指摘し,これを射出成形または射出圧縮成形で実現するための条件を数値解析により示した.その結果金型温度が大きな影響力をもつこと,及び圧縮力の迅速な負荷が金型圧圧分布の制御に有効であることがわかった. 4.光ディスク用スタンパを用いた成形実験より上記3.項の結果がほぼ妥当なものであることを確認した.
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