研究概要 |
サイアロンは,耐食性,耐熱性などの優れた機械的特性を有する構造用ファインセラミックスである.しかし,サイアロンはその優れた特性ゆえに機械加工することが困難であり,その機能および特性が十分発揮されておらず,最適な機械加工技術の確立が急がれている.そこで,本研究ではメタルボンドダイヤモンド砥石によるサイアロンの表面生成機構,研削過程および形状創成過程の検討,さらに加工表面下に残留したクラックによる脆弱化層の評価を行うことによって,サイアロンの高精度で高品位な成形研削加工を行うための加工技術の確立を目的としている. まず,研削加工における1個の砥粒切れ刃による切削現象を解明するため,ダイヤモンド切れ刃を用いてサイアロンの単粒研削実験を行った.その結果,材料除去機構および表面生成機構などによって決定される干渉形態は,切れ刃の最大干渉深さに影響されず,切れ刃の干渉深さに支配されることが明らかとなった.さらに,切れ刃との干渉によって生成残留するクラックについて観察を行い,クラックの生成機構を解明した.また,脆性材料への圧子の静的押込みによって生成されるクラックに関する理論解析を用いて,各干渉形態におけるクラックの伝播深さを切削抵抗の関数として定量的に表現した.すなわち,切削抵抗,切れ刃の平均接触圧力,切れ刃形状および工作物の機械的性質などを求めることにより,クラック深さの定量的把握が可能となった.これらの研究の結果,サイアロンの研削加工する場合の寸法精度および品質に対する砥粒切れ刃,切込み量および速度比など加工条件の関係についての基礎的知見を得たものと考えられる.
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