研究概要 |
ピン・ディスク型摩擦・摩耗試験機を用いて3種類のSiC長繊維強化複合材料ピン(繊維46vol%と33vol%Alマトリックス,繊維45vol%ボロシリケ-トマトリックス)と4種類のセラミックスディスク(ZrO_2,Al_2O_3,Si_3N_4,SiC)を組合せ,荷重W=1.84〜5.29N,摩擦速度60〜90mm/s,無潤滑下で摩耗試験を行った。このときのAEをピン端面に取り付けたAEセンサによって検出し,動的接触状態と摩耗機構の推定を行った。さらに,摩耗面の微細凹凸の幾何学的形状の変化とAE解析結果との関係についても検討を行い,AEと表面損傷状況との関係を明らかにした。その結果,次のようなことが明らかになった。 1.AEのリングダウン計数率は複合材料ピンの比摩耗量の増加とともに増大するのでリングダウン計数率による比摩耗量の定性的評価が可能である。 2.摩擦・摩耗中に検出されるAE波は材質の損傷と破損のみでなく,摩耗粉の移着や摩耗粉の介在過程によっても発生する。また,同一の複合材料ピンでも組合せたディスクの材質によって摩耗状態が変化し,リングダウン計数率の発生状況も変化する。 3.材質の選択の仕方によっては摩耗面の平均線深さlaや微細条痕の総断面積に対する摩耗粉の排出割合α_bとリングダウン計数率は相関があるため,摩耗面の損傷状況ならびに摩耗粉発生状態などをインプロセスで検出可能である。 4.摩耗面の平均線深さlaと微細条痕の平均深さSp/bが増加し,微細突起先端半径r_oが減少するとピンとディスクの比摩耗量は増大する。また,Sp/bが増加すると摩擦係数が増大する。 5.α_b摩耗性指数Γが増加するとピンとディスクの比摩耗量が増大する。さらに,α_b・Γによって比摩耗量の定量的評価が可能になった。
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