研究概要 |
整形の容易なWA砥石を用いた歯車の成形研削は,ワ-クごとに砥石の整形を行うので,自由度が大きく,多種少量生産に適したこれからの歯車研削法として注目されている.本研究では,試作したNC歯車研削盤を用いて,成形研削における研削能率を向上させるうえで障害となる研削焼けと砥石の種類,整形条件,研削条件,研削動力の関係を明らかにし,歯車の成形研削のための基盤デ-タを得ることを目的にしている.砥石は通常のWA46 K,60J,80Jおよび多結晶のSG80Jを用い,浸炭焼入れした試験歯車(歯厚で0.2mm)を1,2および3パスで仕上げた.仕上げ研削は行っていない.研削液は,ソリュ-ションタイプのものを希釈して用いた.得られた研究成果をまとめるとつぎのようになる. (1)WA砥石を用いる成形方式の歯車研削においても,創成方式とほぼ同等以上の高能率研削が可能である.(2)その研削能率は,歯面に生じる研削焼けによって制限される.(3)研削能率(ワ-ク送り速度*切り込み量)が同じ場合は,送り速度を大きく,切り込み量を小さくした方が研削焼けが生じにくい.(4)用いる砥石の粒度によって最適な砥石整形条件が存在する.(5)研削焼けの生じない限界の研削長さは,砥石整形条件によって著しく影響を受ける.研削焼けを生じにくくするには,整形時の砥石周速を小さく,ドレッサ送り速度を大きく,砥石表面に凹凸を付ける砥石整形が有効である.とくに,整形時の砥石周速を減少させる方法は,整形時間と整形精度にほとんど影響しない,極めて効果的である.(6)これは,砥石周速の減少によって砥粒が大きく破砕・脱落するためと考えられる.(4)研削条件が同じ場合,研削焼けが発生する研削動力は,砥石の整形条件に無関係にほぼ一定になる.(8)研削焼けの発生を予知するために,研削焼けの発生する研削動力と用いる砥石の粒度,研削条件の関係を表す実用的実験式を導出した.
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