研究概要 |
初期条件が乱流境界層である二次元平板後流の近傍場における乱流構造の推移を実験的に調べた。流れ場の構造の流れ方向変化がとくに顕著に現れる内層域を比較的に拡大すること,およびこれまで測定例が少ないことを考慮して,レイノルズ数が低い範囲で実験を行った。測定にはもっぱら熱線風速計を用い,主に時空間相関法と条件抽出法によって,過渡状態,すなわち境界層型から自由流型へ移行する状態にある乱流の特徴を検討した。流れ方向の測定方向の測定範囲は後流の運動量厚さの約50までである。得られた結果の要約は以下のとおりである。 〔1〕乱れエネルギ-k=(u^2^^ー+v^2^^ー+w^2^^ー)/2は初期境界層の壁変数で無次元化した(平板後縁からの)流れ方向距離x^+が約200付近で最大値に達したのち,徐々に減少する。実用的数値解析の際によく用いられるv^2^^ー【similar or equal】w^2^^ー,またはw^2^^ー【similar or equal】(u^2^^ー+w^2^^ー)/2は近傍後流においては良い近似とは言い難い。 〔2〕時空間相関の測定によると,初期境界層の内層域にある乱流塊は平板後縁を離れると,一旦後流中心線側へ向う。平板両側から生ずるこのような乱流塊が互いに最も強く干渉し合う流れ方向位置は平均としてx^+=200付近であると推定された。したがって,これと前項の乱れ強さのオ-バ-・シュ-ト現象とは対応していると思われる。 〔3〕後流中心線をはさむ二点のu変動の間には平板後縁直後から弱い負の相関が認められ,その垂直方向範囲は下流へ進むにつれて増大する。この負の相関とともに準周期的な速度変動が存在し,その中心周波数は速度分布の局所平均量によって尺度化されるようである。 〔4〕乱流境界層中で観測されるものと同様の,流れ方向に傾いた速度フロントが近傍後流中にも存在する。後流中心線との成す傾斜角は下流へ進むにつれ増加し,平均速度歪の主軸の方向に近づく。 (以上)
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