研究概要 |
本研究は,空気の超音速噴流を軟質材料の加工に適用することの基礎的検討を行うことを目的としたものであった.空気を使用流体とする事によって,ウォ-タジェット加工における設備費・超高圧・安全性などの問題点が著しく軽減される利点がある.研究の重点は,超音速噴流による加工のメカニズムを調べ,実用化への可能性を探ることにあった.加工対象として,発泡スチロ-ル,氷などの材料を取り上げ,超音速エアジェットが加工に適するが否かの試験を行った.研究は当初予定に従い,超音速噴流を発生させるラバルノズルの設計製作から始められた.製作した3種の超音速ノズルから出る噴流を,シャド-グラフ法により光学的に空気密度分布を調べることで,各ノズルが設計通りの性能を発揮していることがまず確認された.そして,ノズルおよび空気圧力を変化させ,不足膨張・適正膨張の各状態が計算通りに実現されることを確認した.次に,各膨張状態・ノズルから加工面までの距離の変化に対し,発泡スチロ-ルおよび氷がどのように加工を受けるかと言う点に対し系統的な実験が行われた.その結果,発泡スチロ-ルに対しても氷に対しても,適正膨張の状態の超音速噴流が加工能力が最も高く,この状態で超音速噴流は用いられるべきであることが明らかとなった.しかし,さらに詳細な研究により,発泡スチロ-ルの加工の場合と氷の加工ではそのメカニズムが異なっていることも明らかとなった.すなわち,氷の場合にはよどみ点温度が重要な要素となっており,発生熱による融解がその加工メカニズムの一部になっていた.空気を加工に用いるというこの試みは,軟質材料あるいは融点の低い材料に対して有効であることが明らかとなり,今後の研究の進展によってその応用範囲は広がるものと期待できる.
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