研究概要 |
本研究では,2枚の円板で構成されるディスク形MHD流路内の擬似衝撃波について実験的に調べた。流れに電磁力が作用していない通常の流れでは,流路高さが小さい時,壁面に形成される速度境界層により,垂直衝撃波ではなく多重の斜め衝撃波,すなわち擬似衝撃波によって超音速から亜音速への遷移が行なわれる。本研究では,この問題を強い電磁力が作用する場合について取上げ,擬似衝撃波の挙動について調べた。実験には,大型のブロ-ダウン装置を用い,作動気体として1900Kに加熱されたアルゴンを使用した。円板形の超音速ノズルによりマッハ数2.4まで流れを加速し,この流れに最大磁場4.67テスラを印加することにより電磁力を作用させた。その結果,ノズルの下流で静圧が徐々に増加する現象を観測し,更に静圧上昇の開始置とその大きさが,電磁力に依存していることを見出した。静圧上昇の様子は,電磁力が作用しない場合と類似しており,電磁力による擬似衝撃波の発生が示唆された。そこで,これを確認するため,強磁場中でも静圧変動の測定が可能な圧力素子を用い,流れ方向の静圧変動の分布を調べた。その結果,静圧上静が見られる位置よりも上流では,変動が小さく,静圧上昇位置で最大の変動が存在すること,更に下流では,再び変動が小さくなることを初めて測定できた。この測定結果は,通常の擬似衝撃波での結果と良く一致しており,電磁力によって圧力上昇が発生する場合には,擬似衝撃波の形をとることが明らかとなった。また,種々の実験条件下でその挙動を調べた結果,流路形状や電磁力の大きさを調節することにより,大きな圧力変動を伴わないで,超音速流れを亜音速に遷移させることができることを明らかにした。今後は,擬似衝撃波によって発生する圧力損失や熱損失の増加について詳しく調べることにより,研究をさらに発展させたい。
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