研究概要 |
大動力を要する機械装置の自動化・高性能化には,油圧伝動が広く用いられているが,振動や騒音の低減を求められることが多い.本研究は,主騒音源である油圧ポンプに生じる衝撃に基因する振動や騒音を,しゅう動部の油膜と部材の弾性変形により,吸収することを目的とする. 初年度(平成2年度)は理論解析を主とした.理論モデルは,円柱が油膜を張った片持ばりに面衝突する場合を対象とし,流体に対しては圧力にともなう粘度変化と圧縮性を考慮し,片持ばりに対しては衝突部の弾性変形と片持ばりのたわみとを独立に考慮した.衝撃吸収能力を反発係数で評価すると,衝突速度の比較的小さく膜厚の厚い場合に吸収能力の大きくなること,部材のたわみを許容する構造では膜厚の薄い場合に吸収能力が認められること,などを明らかにした. 最終年度(平成3年度)は実験を主とした.すなわち,円柱(8.5g,衝突面半径4.5mm)と球(8.35g,半径6.35mm)を油膜を張った片持ばり(鋼製,長さ180mm,幅36mm,厚さ16mm)および基礎に固定した鋼材に自由落下させ,その反発係数を求めて衝撃吸収能力を評価した.結果として,点衝突となる球の場合に比べ平面衝突となる円柱の場合の方が反発係数が小さく緩衝能力のあること,油膜の厚さが厚いほど能力が増大すること,片持ばりの存在ははりのエネルギ-吸収が存在するため全体としての能力の増大に結びつくこと,などを明らかにした.さらに,前年度の理論解析(円柱)と実験値との比較を行ったが定性的な一致は良好であるが,定量的には反発係数に差を生じた.なお,片持ばりの最大たわみについては,両者の一致は定量的にも良好であった. 以上に基づき,油膜と部材の弾性変形を利用して衝撃を吸収することは可能であり,その程度については理論解析から判断ができるとの結論を得た.
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