研究概要 |
本研究室で開発された温度成層形成装置を用いることにより、風洞内に最大温度差△T=100Kの任意の安定度を有する成層流を精密に実現することができる。本研究によって得られた結果は以下の通りである。 1.温度成層形成装置内の混合胴を60層に層分化することにより、局所最大温度匂配が5000k/m、それに基ずく局所リチャ-ドソン数Ri=0.7の安定成層流を風洞内に実現した。これは、成層流の静的安定限界(Ri=1/4)を越える強安定成層流であり、従来、水路・水槽等を使用しなければ実現不可能であった内部重力波の自然発生を風洞内に実現できることがわかった。2.ステップ状の温度分布を有する強安定成層流の混合層内で発生・発達する波動を観測し、それについて詳細に調べた。その結果、(1)BruntーVa^^¨isa^^¨la^^¨周波数(N=13Hz)以下の周波数成分のエネルギ-が下流に行くに従い増加して行く。(2)温度変動と鉛直方向速度変動間の位相供差がπ/2でその時のコヒ-レンスが1に近い値となった。(3)Thorpeが理論的に示した内部重力波の三波共鳴の条件を満たすピ-ク周波数の発生が認められた。これらの結果より、発生・発達した波動は内部重力波であることが判明した。3.成層流の安定度を全域的リチャ-ドソン数Ribに基ずいて3種類(Rib=1.36×10^<ー3>,1.6×10^<ー3>,1.67×10^<ー3>)設定し、混合層内で発生・発達する波動と安定度の関係を調べた。その結果、安定度が大きい成層流ほど浮力の抑制効果が顕著に認められ、内部重力波を早く発生・発達させることがわかった。4.流速の温度補償に関して仮定や近似を用いることなく補償式を簡略化し、それに基ずいて実現された温度流速計は計測範囲(流速U=1.8〜12m/s,温度差△T=0〜140℃)、周波数応答(DC〜5kHz)、計測精度(SN比,90dB)等、従来のものより高性能化を計ることができ、成層流中で速度・温度変動を正確に定量的計測することができることがわかった。
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