研究概要 |
内燃機関における非定常ガス流動現象の数値予測を行うときの問題点の一つは,式の離散化に伴う偽拡散(数値拡散)によって,温度,圧力,流速,乱れなどの値の予測精度が低下することである.この研究では,偽拡散の少ない計算手法の検討を行い,以下の成果を得た. 1.一次元ガス流動解析に用いられる特性曲線法に,ガス粒子の移動を追跡する格子を組み込んだ新しい計算スキ-ムを提示し,実験値との比較から,数値拡散の影響を受けることなく圧力波,温度波の挙動の正確に予測できることを明らかにした.排気再循環ガスの挙動,吸・排気騒音の予測計算を行い,新スキ-ムによる特性曲線法が高い精度を必要とするガス流動計算に適していることを示した. 2.二・三次元圧力波伝ぱ現象の解析については,消音器内の非定常流動場を対象として,音圧特性と流動抵抗とを同時に定量的に予測する手法を検討した.実験結果との比較から,数値拡散が小さく安定性の高いCIP法を用いれば,圧力波の伝ぱ現象とガスの粒子速度で伝ぱする現象を精度よく解析できることを明らかにした.また,膨張型消音器に模した二・三次元モデルを対象に,実機運転状態における流動計算を行い,音圧特性と流動抵抗値の同時予測の可能なことを確認した. 3.三次元ガス流動場での乱れと濃度拡散現象の高精度解析を行うための計算手法について検討した.乱流の計算手法としては,有限体積法のもとで一般曲線座標変換の手法を取り入れたGTT法を開発し,kーε乱れモデルを用いて,機関の圧縮行程での乱流場を計算し,実験値と比較して妥当な結果が得られることを示した.濃度輸送方程式にはCIP法を適用し,偽拡散の小さい高精度解析が可能なことを示した.そして,吸気2弁式機関での混合気の乱流拡散過程を解析し,片側の吸気ポ-トから吸入された混合気の濃度分布の層状化現象を明らかにした.
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