研究概要 |
塩化アンモニウム(NH_4Cl)水溶液の2成分相変化材を用い,冷却面の姿勢と温度,水溶液の初期濃度及び初期過熱度が凝固・融解形態に及ぼす影響を系統的な実験によって調べた.また,数値シミュレ-ションのためのプログラムの開発を行い,実験結果と比較すると共に初期過熱度が凝固に及ぼす影響などを詳細に調べるために計算を行った.その主要な結果を要約すると次の通りである. (1)水溶液の初期濃度C_oが共晶濃度C_eより小さい場合は,凝固の発達とともに重い溶質が液相内に排出されるため,横から及び下からの凝固においては濃度対流が凝固層に直接影響するため種々の特徴ある凝固形態が観察された. (2)C_o<C_eで初期過熱度の影響を調べたが,初期濃度が大きい場合,その影響が顕著であり,初期過熱が大きいとデンドライト層はかなり密になり,その発達は遅れる. (3)C_o<C_eで上向き冷却面の場合は,凝固に伴って下部から低濃度溶液が排出され,濃度分布が不安定になり,固液共存相と液相の界面に疎らに分布する火山状の突起及び固液共存相の内部にはこの突起につながるチャンネルが観察された. (4)融解過程の実験結果より,初期濃度が小さい場合は純水の融解過程と大差ないが,初期濃度が共晶濃度の場合,濃度対流と温度対流が複合し,かなり複雑な融解界面が観察されると共に,融解速度も大きくなることが分かった. (5)開発したシミュレ-ションプログラムを用いて,種々の条件での計算を行った結果,妥当な結果が得られ,また実験では得ることが困難な濃度分布の時間変化などの重要な情報が得られた.
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