研究概要 |
近年,工作機械は急速にNC化されつつあるが,その中でNC化が困難とされているものに,歯車加工機が挙げられる.例えば,数年前までは,NCホブ盤は機械式ホブ盤と比較して高精度加工は困難であるとされていた.本研究では,これを解決するため,歩行ロボットの研究を通して得られたダイレクト・ドライブ技術をもとに,歯車加工機に搭載可能な高精度高速サ-ボスピンドルの実現を試みた.このサ-ボスピンドルの制御には,研究代表者が1981年に提案した2相PLL(Phase Locked Loop)が応用されており,高精度かつ高剛性な同期回転を得ることを可能にするものである. 本研究は平成2年度と平成3年度の2年間に亘って行われたものであり,本研究実績は次のようである.まず,ビルドインモ-タと磁気スケ-ルを組み込んだ歯車研削盤用サ-ボスピンドルを試作した.これには最高12,000rpmの回転速度を実現するために必要となる動バランシング機構が搭載されている.さらに,2相PLL回路とサ-ボアンプを製作し,必要とされる高速応答性が実現されていることを確認した.制御系には,繰り返し制御を導入し,周期的外乱に対する適応性の向上を図った.また,実際に歯車研削盤をNC化する場合,歯車の研削時に回転中の工具とワ-クが正しい相対位置関係にあるかどうかを判定して,ずれている場合にはそれを補正する機構が必要となるが,この初期歯合わせを行うために,ビデオカメラを用いた画像処理を導入した新しい手法を提案し,その有用性を明らかにした. 本研究で試作したサ-ボスピンドルを用いたNC歯車研削盤で研削実験を行った結果,累積ピッチ誤差が10"以内の高精度な歯車を極めて高速に加工することが可能であることが実証された.
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