本研究は共振DCリンクインバ-タにおける共振コンデンサの過大電圧発生を防止する制御法について検討を行ったもので、得られた成果を要約すれば次にようになる。 1.共振コンデンサの過大電圧の発生は共振開始時における共振リクトルの電流初期値が適切でないために起こるので、まずその適値を見出すため、共振リアクトルの損質及びインバ-タ負荷の損失を考慮した共振回路の詳細な解析を行った。その結果、共振持続条件を満足しかつ共振コンデンサのピ-ク電圧を最小にするための共振リアクトル電流初期値の式を導出した。 2.1で求めた電流初期値の実回路での設定は、共振開始の直前に共振コンデンサを短時間短絡することにより行うこととして、その短絡をインバ-タのスイッチング素子を利用して行う方法と、スイッチング素子の蓄積時間を考慮した短絡時間の設定法とを提案し、これらをとり入れたインバ-タシステムを試作した。 3.試作したインバ-タをRL負荷を接続して実際に運転し、2.で提案した共振リアクトル電流初期値の制御法の効果を実験的に調べた。その結果、本制御が共振コンデンサの過大電圧の防止に大いに有効であることが確認された。 4.本インバ-タシステムの動作・特性に大きく影響する共振リアクトルの構成法を検討した。その結果、細線を撚り合わせたリッツ線で構成される空心トロイダルリアクトルが、体積はやや大きいものの高性能コア材を用いたリアクトルと同程度の性能が低コストで得られることなどが判明した。また、リアクトルの損失やインバ-タ素子の導通損失を考慮したシステムの損失評価式を導出した。
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