近年.生物の頭脳の情報処理形態を模倣した計算装置及び計算理論.つまりニュ-ラルネットワ-クコンピュ-タについての研究が、ハ-ドウェアとソフトウェアの両面から盛んに行なわれている。このコンピュ-タは、アナログで超並列といった特徴を持ち、現行のコンピュ-タにはない優れた能力を有するものと考えられ、ソフトウェアの面でも色々な研究が行なわれている。本研究の目的は、このニュ-ラルネットワ-ク理論の電力系統への適用性を探り、電力系統に適した手法を開発することであった。現在、神経細胞(ニュ-ロン)モデルとしては、色々の型が提案されているが、本研究では特に、ラメルハ-ト型モデルとホップフィ-ルド型モデルを用いて理論開発を行った.ラメルハ-ト型モデルはパタ-ン認識に有効であり、ホップフィ-ルド型モデルは最適化計算に威力を発揮すると言われている。 本研究では、過渡安定度判定に、ラメルハ-ト型のバックプロパゲ-ション法を応用し、従来の方法では解沢困難ないくつかの問題を解決した。すなわち、電力系統のオンライン過度安定度判定法としては大きく分けて、エネルギ-関数法とパ-セプトロン法を用いたパタ-ン認識法があるが、エネルギ-関数法は、同期機のモデルとして制御器付きのモデルを採用できないという欠点、また従来のパタ-ン認識法としては、系統構成の変化や発電機台数の変更に対応できないという欠点があった。本研究により、これらの欠点は全てラメルハ-ト型のパタ-ン認識では解沢できることが判明した。また、電力系統の状態推定計算法として、ホップフィ-ルド型モデルの適用を行なった。この結果、ホップフィ-ドモデルの定式化そのものが状態推定計算の定式化に対応できることが判明した。ガウスニュ-トン法、高速二次法ならびに高速分離法による状態推定計算への適用可能性を検討し、新しい形の入出力関数を提案した。
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