研究概要 |
本研究の目的は、MHz帯でも低損失である高電気抵抗の高透磁率薄膜を得る事である。まず薄膜の電気抵抗と、透磁率、損失についての理論式をつくった。これによると、100MHzでは、およそ1000μΩcmの電気抵抗が必要である事が予測できた。これにもとづいて以下の実験を行った。 1.(Fe,Co)ー(Ta,Zr)合金タ-ゲットとBN,Si_3N_4タ-ゲットを使用し,窒素雰囲気中でイオンビ-ムスパッタまたは微粒子薄膜用に改造したRFマグネトロンスパッタによって、薄膜試料を作製した。固有抵抗は200〜300μΩcmになり、同時に優れた軟磁性を示した。 2.(Fe,Co)ー(Ta,Zr)合金タ-ゲットと酸化物(Nb_2O_3,ZrO_2,Al_2O_3)タ-ゲットによって作製した薄膜は、多結晶状態であり、軟磁性は得られず電気抵抗は100μΩcm以下であった。これは、結晶粒子が数100A^^°程度に成長するためと考えられる。 3.(Fe,Al)ーRE(RE:希土類)合金とFeの複合タ-ゲットによって作製された薄膜は、最高1400μΩcmの電気抵抗を示し、Hcは0.20eまで低下した。 結晶構造、熱処理、各種の磁気定数の測定によって、1.はアモルファス相と結晶相の境界の状態で高い電気抵抗と軟磁性が同時に実現される事、また、3.はアモルファス相であり、磁歪定数が若干高いことがわかった。以上の結果からは、3.の材料が極めて有望であり、現在アルモファス相と微結晶相の境界での試料作製法と、その物性を研究中である。また、理論式から予測される損失の改善について、薄膜透磁率計によって評価をすすめている。
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