研究概要 |
音響情報処理システムにおいて「複数音源によって生じた干渉音場から目的信号音を高品質で抽出する」問題に対して一つの解決法を与えることが本研究の目的であった.2チャンネルの信号入力を基に,それらの信号のいかなる情報がカクテルパーティ効果プロセッサにとって有効な情報になるかを分析的に明らかにすることを目標とした. 1.二素子球バッフルマイクロホンによる収音方式を採用した. 2.両耳入力信号データベースとして回折情報辞書を作製し,種々の音源への対応,方向設定誤差の影響の回避,反射音のある音場への対応が可能となるようにした. 3.回折情報辞書を併用したシミュレーションによるパタン認識処理に有効な情報の分析的検討によって,自由音場の場合には,システムに与える信号入力チャンネル数よりも多い音源数に対して方向の推定と目的信号の抽出が可能となった. 4.最も有効な情報は両耳入力信号中において検出されたピッチの存在情報であった.システムでは,これを検出し到来方向の推定の手掛かりに利用した. 5.回折情報辞書を用いる到来方向同調型の機能を持たせたウィーナーフィルタで妨害音抑圧の手法が有効であった.システムの性能に及ぼすフィルタ長の影響,ピッチの時間変動の影響などを評価した. 6.妨害音抑圧手法では音源信号間に存在する相関のある成分が抑圧されるため,この対策用の後処理部を付加することの必要性とその処理手法も検討した. 7.反射音が加わる場合には,両耳入力信号の狭帯域分析データの時間,周波数領域に渡る分析的検討及び理論解析に基づき,音場中の直接音の到来方向推定を行う前処理部の構成問題を研究した.両耳信号毎の狭帯域フィルタ群の周波数領域情報を入力に持つ教師付きパタン学習システムで構成できる見通しを得た.
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