研究概要 |
本研究の主要な成果は,以下のようである. (1)先行仮実行方式の提案と設計 判断分岐文を含むプログラムについては,判断結果が判明するまではどの分岐を選択するかが不明なため,これまでは逐次的な実行方法しかなかった.これに対して,本研究では可能な分岐の全てについて並列に実行して,後で正しい結果を選択するという先行仮実行方式を提案した.本方式を採用することによって,プログラムの実行速度を3ー5倍程度まで高速化できることを,実際のプログラムについて実証した. さらに,先行仮実行方式をデ-タフロ-制御方式を基本に実現する方法を考え,これに基づいたCPUのハ-ドウェア回路を設計した.現在,VLSI化を図るべく回路シミュレ-ションを実施しているところである. (2)マルチア-キテクチャコンパイラの開発 アレイコンピュ-タとベクトルコンピュ-タの複合体を対象に,単一プログラムを分割して効率よく両者を使って分散処理するシステムの研究を行った.本システムはプログラムの並列性を解析して,ベクトル向きとアレイ向きの部分を分類し,それぞれをコンパイルする.なお,本システムの特長として,コンパイルの結果はア-キテクチャの依存しない中間コ-ドを生成する.これにより,今後出現するであろう新しいア-キテクチャの並列処理計算機に対しても容易に適用が可能となる. なお,この研究の過程においてル-プ文の効率的な並列化の方法を提案した. (3)並列応用プログラムシステムの開発 アレイコンピュ-タの上で,効率的に実行できる有限要素法ソルバシステムの研究を進めた.収束が速くかつ並列化しやすいアルゴリズムを考案して,それを実装して並列化の効果の評価を行った.この結果に基づいて,グリッドポイントの生成および結果の可視化が可能なソルバシステムの開発を進めている.
|