研究概要 |
これまでに指摘されていなかった新しい光導波現象として,3次非線形性をもつ非対称光導波路分岐が示す光双安定特性を,解析ならびに実験によって解明するとともに,これを新光機能デバイスとして応用する可能性を考究することを目的として,研究を進めた. まず,特性解析の基礎として,断面内で非線形性が不均質に分布する光導波系の光波伝搬特性に着目し解析を進めた.この様な系では,光波電界の2乗,すなわち,局所的な光強度に比例して屈折率が変化するので,モ-ドの位相定数や界分布が伝送電力に依存することになる.非線形な導波路と線形な導波路とが近接した方向性結合器型の結合系を具体例として,モ-ドの分散および界分布を明らかにした.その結果,新たに,伝送電力が一定の範囲内にある場合,3種の解の存在することが分った.内1つは非安定解であり,位相定数を伝送電力に対して表示すると,適当な結合度に対して,分散曲線が折れ,双安定的な形状を示す. この,新しい知見を基礎に,光導波路分岐の伝達特性を解析した.分岐形状の変化が十分に緩やかであるとして,先の解析結果を基に局所正規モ-ドを導出し,これにビ-ム伝搬法(BPM)を適用して解析を進めた.Y分岐およびX分岐導波路を対象に数値計算によって特性を解明し,スイッチングデバイスへの適用の可能性を考究した. 非対称な非線形Y分岐導波路では,入力光電力に対して出力ポ-トを双安定的に切換える自己保持スイッチング特性の得られることが示された.また,非対称非線形X分岐では信号光と制御光とを分離することが出来,制御出強度による信号光出力ポ-トの双安定スイッチングの可能性が得られた.数値例によれば,これまでにない低光電力でのスイッチング動作が期待される.既に,初期的試作実験にも着手している.
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