研究概要 |
本研究では,プラントの運転レ-ト,すなわち負荷を変更しながら同時に他の制御量を与えられた目標に追従させるトラッキング制御システムを設計するための基礎的研究を行った.主な結果は次の通りである. 1.予見,積分機能をもつディジタル制御系の設計法を拡張して,操作量と制御量の間に直達項があり,かつプラントがむだ時間を含む場合にも適用可能なトラッキング制御系の設計法を確立した. 2.最適制御則は拡大システムに対するリカッチ方程式を解くことにより決定されるが,化学プロセスにしばしば見られるような一方向性のむだ時間の場合に対して,むだ時間要素を状態方程式から除去してできる低次元システムに対するリカッチ方程式の解から所望の解が構成できることを示した. 3.実験用熱交換プロセスの入力出デ-タに基づいて,最小2乗法に基づくシステム同定の方法によりむだ時間を含む状態空間モデルを作成し,シミュレ-ションとプラント実験により,本制御アルゴリズムの実用可能性について確認することができた. 4.空間線形化法により入出力線形化されたシステムに対して,1),2)の制御アルゴリズムを適用して,非線形トラッキング制御系設計の新しい方法を提案した. 5.負荷変化を考慮した非線形完全混合槽型反応器(CSTR)のトラッキング制御について,入出力線形化,ディジタルトラッキング制御則,およびオブザ-バを組み合わせた新しい制御系の設計法を提案した. 6.これらの研究を通じて,非線形プラントのロバスト安定性を判定する方法論を考案するという大きな課題がクロ-ズアップされた.今後,ロバスト安定という側面からプロセス制御の研究を継続して行う予定である.
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