研究概要 |
超音波を利用した構造部材の損傷評価の信頼性の向上を目的として,理論物理学の分野で広く知られる部分波分解法を超音波による損傷評価に取り入れ,3次元波動論をもとに,次の手順に従い研究を実行した. 1.欠陥性状と散乱波動場の位相シフトの関係の部分波分解法的定式化と数値実験 欠陥による散乱波の積分表現を道具とし,欠陥性状と位相シフトに関する次の関係式を順次導いた.(1)遠方散乱場の散乱振幅の表現,(2)散乱振幅と散乱エネルギ-の関係式,(3)散乱エネルギ-と位相シフトの関係式,(3)位相シフトと散乱体性状の積分関係式.左記(4)で導いた散乱波動場の位相シフトは,欠陥形状,欠陥表面上の境界条件・メカニズム,欠陥の物性,入射波の波数に関しており,これらを与えれば,位相シフトは一意的に定まることを数値実験的に検証した. 2.弾性散乱波に対する観測可能な量と散乱体性状の関係の確認 散乱波に関する各物理量:散乱振幅,散乱エネルギ-,位相シフトは互いに関係しており,実質上,このうちの1つの物理量と散乱体性状の関係を定量すればよく,実験的に計測可能な物理量のうち,散乱エネルギ-と散乱体性状の関係を弾性体中の欠陥について数式化し,散乱体性状の定量化策について検討した. 3.機器設計のための部分波分解超音波法の提案 散乱波動場の位相関係を吟味し,位相シフト量から散乱体の形状が維定できることを数値実験的に示した.ただし,現時点においては,簡単な形状についてのみこの点について確認しており,より複雑な形状の推定が可能かどうかについては,現実問題におけるノイズレベルとも関係し,今後の検討を要する.
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