研究概要 |
動的平衡河床における河床表層砂の粒度組成の変化機構を大別すると,1)粗砂の移動が活発でないような水理条件下で停止している粗砂の底部へ細砂が補足されることによる表層砂の粗粒化(mobile armoring),2)細砂の移動性が粗砂の移動性より大きいために流砂の平衡が保たれるためには粗砂の存在率が河床表層砂で大きくならなければならないことによる粗粒化(dynamic armoring),3)全粒径砂が活発に移動している場合粗砂の流れへの突出と細砂による河床表面の滑面下の効果によって粗砂の移動速度が大きくなり,流砂の平衡状態を保つために粗砂の河床表層での存在率が小さくなる細粒化,の3つがあることを実験的に示すとともに理論的考察を加えた.とくに,掃流力の大きい場合の河床表層砂の細粒化現象については従来ほとんど検討されていない新たな知見である。 一方,河床低下時のような非平衡流砂量場では,河床低下が進行している間でも河床表層砂は粗粒化しているという実験結果を,新たに提案した粗砂・細砂の鉛直分級モデルを用いることによって説明できることを示した.この鉛直分級モデルは,混合砂層に振動を与えれば細砂が空隙を埋めるように沈み込み,粗砂が表層に表まるという通常みられる分級現象が流水下の河床表層でも生じているという発想に基づいて提案したものである。河床表層砂の移動層が振動を受けている砂層に対応するため,流砂が活発に移動し移動層厚が大きいほど表層砂の粗粒化の程度は大きくなる。このとき,粗砂・細砂の分級は鉛直方向に卓越するため流下方向の粒度変化は小さい。また,河床低下がほぼ停止し表層砂の移動が活発でなくなった後の表層砂の粗粒化は,細砂が表層砂より抜け出し,上流側から徐々に粗粒化していくという従来の流下方向水平分級機構によって説明できる.
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