研究概要 |
本研究の目的は,福山市鞆地域の歴史的風土という観点から,橋の幾何学的形態を考察し,結論として「鞆の琴橋」を提案すること,楽器「琴」のイメ-ジを取り込んだ橋は非対称なものと予想されるので,対称構造物と比較して非対構造物から人々が受ける印象の心理分析を行い,人々の非対称構造物受容性を明らかにすることである。 本年度の研究成果を以下の列挙する。 (1)鞆の特色ある地縁文化として,中央政府の敗者の隠忍の場,邦楽の聖地,健康酒発祥の地,韓国との国際親善の場などをあげることができることがわかった。宮城道雄・琴を活用することに意義を見いだせる。 (2)鞆の地域イメ-ジについての分析では,福山市内を8地域に区分し行った心理調査結果から,鞆は他の地域と比較して女性的,神聖的な地域イメ-ジを持つべきであることがわかった。 (3)20種類の楽器についての心理調査分析から,琴が極めて女性的な印象を与える楽器であり,鞆の地域イメ-ジと適合することを確かめた (4)実在の構造物から色彩,材質,装飾などの効果を除去して,純粋に幾何学的形状とその形状の与えるイメ-ジの関係を明らかにするため,正多角形を中心とした平面図形に対して,形容詞対による心理調査を実施し,角数・対称非対称の形状・高さにより男女性性イメ-ジに相違があるかどうかを考察し,非対称形であっても横幅に対し高さを抑えれば,女性的なイメ-ジを与えることが出来ることを明らかにした。 (5)時代循環の位相分析については,日本史の歴史年表の出来事を対立・政治・経済・文化の4種類の分類し,自己相関・回帰分析を行って,循環周期150年及び鋸歯モデル・段階モデルを導きだし,現在が文化の時代にさしかかっていることを実証し,地縁文化を取り込んだ設計の意義を明らかにした。
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