研究概要 |
1.活性汚泥のポリビニルアルコ-ル(PVA)による馴養過程の遺伝学的解明に必要な遺伝子断片を得るために研究室保有のPVA分解菌Pseudomonas vesicularis var.povalolyticus PH株の染色体からPVA分解酵素(酸化酵素および加水分解酵素)をコ-ドする遺伝子のクロ-ニングを試みた。ベクタ-pUC19と宿主E.coli JM103を用いたショットガン法で、合計約24,000の形質転換株をスクリ-ニングしたが,目的株は検出できなかった。 2.そこがPVA分解酵素を精製し、そのアミノ酸配列に応じて作成されたDNAプロ-ブを利用するクロ-ニングを試みた。両酵素はPH株の培養上澄液から、硫安分画、およびQーSEPHAROSE,TOYOPEARL HW50,BLUEーTOYOPEARL 650MLの各カラムクロマトグラフィ-により、電気泳動的に単一になるまで精製された。PVA酸化酵素は分子量約88,000、PVA加水分解酵素は分子量約68,000で、それぞれアミノ酸組成および一部のアミノ酸配列が決定された。これを基にDNAプロ-ブを作成し、PCR法を活用した遺伝子増幅法により、PH株染色体からのクロ-ニングを行っているが、現時点で両構造遺伝子は分離できていない。 3.一方、DNAコロニ-ハイブリダイゼイション法による活性汚泥中での特定遺伝子保有細菌の検出方法を、研究室で既に単離した遺伝子断片(サリチル酸酸化酵素およびカテコ-ル酸化酵素)のプロ-ブによって検討した。目的遺伝子保有菌は、ニトロセルロ-スフィルタ-上に極僅かでも(細胞数が10^5〜10^6個)ブロッティングされれば、活性汚泥細菌のバックグランドに対して十分容易に検出できることがわかった。 4.今後はPVA分解遺伝子のクロ-ニングを完了し、PVA馴養過程における細菌相および遺伝子相の変化を追跡する予定である。
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