研究概要 |
水中細菌及びウイルスについての陽電荷フィルターろ過法の適用性を評価するために,ガラス繊維ろ紙を対照として細菌とウイルスの捕捉能力を比較評価した。陽電荷フィルターはCuno Inc.社製Zeta-plus Virosorb 1MDS(平均孔径1μm)を使用した。対照とした微生物は,細菌については大腸菌とウェルシュ菌の2種,ファージについてはQβ,MS2,未同定の環境分離株の3種である。細菌については,培養菌,環境水のいずれの場合も陽電荷フィルターの捕捉率はガラス繊維ろ紙の捕捉率に比べると有意に高く,メンブランフィルターに匹敵する細菌捕捉能力があることがわかった。大腸菌ファージのフィルターへの捕捉が静電的な吸着によると考えられたので,pH依存性についても検討した。ファージQβ及びMS2の捕捉能力はろ過開始直後は数十%の捕捉率を示すものの,ろ過の継続に伴って捕捉率は速やかに減少した。ろ過面積2.3cm^2のフィルターで100mLろ過したときの全体の捕捉率はQβで20〜50%,MS2で30〜50%と低くpH依存性は認められなかった。これに対し環境分離株では顕著なpH依存性が認められ,pH6以下では90%を超える捕捉率であったが,pH7では70%,pH8以上では40〜50%程度となり,pHがアルカリ側になると捕捉率が著しく低下する傾向が認められた。このようなpH依存性はファージとフィルターの静電的性状に起因するものと考えられたので,調製用隔膜式液体等電点電気泳動装置ロトフォアを,両性電解質としてファルマライトを使用してファージの等電点を測定する試みを行った。等電点pHは実験毎に異なったうえ,ファージの回収率が数%以下となり,本装置を用いて信頼性の高い等電点を得ることはきわめて困難であった。本装置では泳動後にファージの90%以上が隔膜に付着しており,隔膜などの付着面を持たない方式の泳動装置を使用する必要があることが示唆された。
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