研究概要 |
本研究では,曲げせん断を受けるRC部材ヒンヂ部のじん性評価の為の基礎デ-タ入手の為の梁実験と,トラス・ア-チ重ね合わせ理論及び骨材のひびわれ面でのかみ合い作用を取り入れた一様応力場理論(以下Kupfer理論)を用いた詳細な解析を行った。上記基礎実験として,供試体寸法及びせん断補強筋量を同一とし,主筋の降伏強度のみを変化させた梁の曲げせん断実験を実施した。こうすることによって,せん断破壊するものから曲げ降伏後の塑性域でせん断破壊するものまでを統一的に評価できる。実験の結果および解析の結果より以下の結論が得られた。 1)トラスア-チ理論(これは日本建築学会論の“鉄筋クンクリ-ト造建物の終局強度型耐震設計指針"に採用されている)では,ヒンヂ部の要求塑性回転角に応じて,有効コンクリ-ト圧縮強度及びトラス角度を変える手法でヒンヂ部のじん性確保が可能であり,有効圧縮強度の基本値としては,Vfc´=3.68f´c^<0.667>(kg/cm^2)が有効である事,およびVfc´の低減方法としては上記指針の方法が適用できることが明らかになった。ただし,トラス角度については決め手がなく今後の課題として残った。 2)Kupfer理論では,ヒンヂ部の軸方向ひずみがせん断強度を与える際の重要な1要因となっている。梁部材の繰返し曲げせん断実験では,塑性変形の進行ともなって,軸ひずみが増大していく現象が見られ,これをパラメタ-としたじん性の評価が可能と考えられる。そこで実験で計測されたヒンヂ部の軸ひずみを用いて,潜在的なせん断強度を計算し,実験結果との比較でじん性評価を行った。その結果,軸ひずみをパラメタ-とした,ヒンヂ部のじん性評価が可能であることが判明した。ただし,繰返し曲げせん断応力下での2方向斜めひびわれ状態に対するコンクリ-ト圧縮強度評価が今後の課題である。
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