研究概要 |
本研究は、先ず第一にヨ-ロッパ諸国がアジアの植民地で作りだした特異な建築様式の存在を実証的に明らかにし,ついでその成立過程と周辺への伝播過程に仮説を提示することにある。科研費と同時に,トヨタ財団,国際交流基金,筑波大学学内プロジェクトの研究助成を受け,関係資料の収集と現地調査を実施することができた。そして,成果の一部をいくつかの学会誌に投稿したのを始めとして,全体をまとめて平成3年度6月東京大学に博士論文として提出した。内容は,1章既往の研究の整理,第2章海域フロンティアの商館建築,第3章内陸フロンティアのバンガロ-とインデッシュ,第4章都市計画としてのショップハウス,第5章近代コロニアル様式としてのインド・ゴシックとインド・サラセン様式の存在を明らかにした。これらは,ヨ-ロッパ諸国の植民地の拡大とともに東アジアに到達し,日本の開国と同時やってきた外国人の建築様式となった。特にバンガロ-やインデッシュ式の住宅は,彼らの熱帯居住様式と結び付いて19世紀広く用いられた。また,インド・ゴシックとインド・サラセン様式は,ヨ-ロッパ文化の優越性を背景にしてアジア諸国の近代様式となるべきであると主張された。植民地でもなかった日本にも,この論理によって両様式がJ.コンドルによってもたらされた。 この3年間続けて科研費の研究助成を受けてきたが,その間海外の研究者から刺激的な論文や書物が多数著されるようになった。今後末だ行われていない現存建築例を基にした調査研究や,アジア人側の近代コロニアル様式に対する活動を明らかにする必要があるであろう。
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