本研究は、地方の城下町とその周辺の町場の形成とその変容過程に関する都市形成史的な研究である。具体的には、山陰地方でも歴史的景観を留めている城下町松江と、その周辺部に形成された町場のうち宍道・安来・平田・今市など松江藩の中でも重要視されていた町場を取り上げた。研究の第一目的は、城下町とその周辺都の町場について、街区構造・住居集合の構成要素を、近世土地資料の解読・分析作業と歴史的街区の観察調査によって明らかにしようとすることであった。 本年度は、城下町松江を中心に調査研究したが、武家屋敷と町人町に分けて街区の基本構成とその特性を明らかにした。基礎資料としては、広島大学附属図書館に所蔵されている『中国五県土地祖税資料文庫』に含まれている「松江城下武家屋敷明細帳」(貞享頃〜明治初期の武家の変動、資料16点)と「沽券大帳」(明治6年の屋敷帳、松江市街7小区の内小区欠)を用いたが、武家屋敷では地区を限定(城東・城西地区)して、元禄年間の屋敷構成を復元し、当時の武家屋敷の動態(変動)を明らかにし、町人町については、末次・白潟「両町」の街区構成を「沽券大帳」を解読しながら、地価構造や職能分布を中心に分析してみた。 こうした歴史的街区構成の基礎的研究は、城下町や町場が持つ近世的な都市構造の相互関係を浮き彫りにし、地域的な住居集合特性を一層鮮明にすることとなった。また、ない得た研究成果は、必要に応じて関係市町の教育委員会や図書館等にも報告しているが、復元的資科は歴史講座等の基本資料ともなり活用されている。
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