研究概要 |
放射性廃棄物地層処分試験場として有望視されている釜石鉱山の花崗岩体を対象として,岩盤水理モデルに関する研究を実施した。本研究で得られた成果をまとめると以下のようである。 (1)坑道壁面およびボ-リング孔壁面におけるき裂計測により,岩盤内の三次元き裂分布を定量化する手法を開発した。本き裂モデルは,岩盤中のき裂を円板き裂と理想化し,き裂の直径と方位に関する確率密度関数とき裂の体積密度により岩盤き裂群を表現するものである。このき裂モデルについて確率論に基づいた理論的合析を行い,上記のき裂諸量がスキャンライン計測により定量化されることを明らかにした。また,本手法を釜石鉱山花崗岩体中の調査坑道に適用し,当サイトの岩盤き裂群のモデル化を行った。 (2)岩盤き裂の質的特徴を分析するために,き裂情報デ-タベ-スシステムを開発した。調査された項目は,き裂幅,充てん鉱物等30項目におよび,これらすべての情報が約1000個のき裂に対してデ-タベ-ス化されている。このデ-タベ-スを用いた解析により,き裂幅の分布,充てん鉱物の特性,変質帯分布など岩盤透水性に関与するき裂特性を明らかにした。また,これらの調査に画像処理が有効であることも確認された。 (3)上記の成果をもとに岩盤水理モデルに関する理論的研究を実施し,当サイトの岩盤の透水性を予測した。その結果,当岩盤の広域的透水係数は1.6×10^<-6>cm/sとなり,これは実測値の平均値2×10^<-6>cm/sとよく一致した。また,透水テンソルの解析により透水の異方性を予測したところ,異方性主軸方位は実測値と大略の一致を示した。さらに,き裂分布のモンテカルロシミュレ-ションにより,原位置計測による透水係数のバラツキが,き裂分布(空間分布)に密接に関係することを明らかにした。
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