研究概要 |
Cu_6Ceは,低温における重い電子状態に加え,およそ170k付近で斜方晶【tautomer】単斜晶の構造相転移を生じることが知られている。本研究では,Cu_6Ceに存在する重い電子状態と構造相転移との相関を明らかにするため,構造相転移の結晶学的特徴について主に透過型電子顕微鏡を用いて調べた。その結果,前年度までに,本物質では斜方晶【tautomer】単斜晶構造相転移は観察されず,冷却に際し一次元変調構造が出現することを報告した。そこで,最終年度である平成4年度は主に液体ヘリウム低温ステージを用いて相転移のその場観察を行い,一次元変調構造出現の詳細について検討した。 前年度までと同様に,透過型電子顕微鏡試料は厚さ1、2mm程度の板状試料を機械研磨後イオンミリング法により作製した。ここで,電解研磨法による試料作製も試みたが,電解液の選定ならびに電解条件の設定が困難であった。このため本研究ではイオンミリング法によって作製した試料のみを用いて観察を行った。相転移のその場観察は日立H-800型透過型電子顕微鏡を用いて室温から約20Kの温度範囲で行った。 液体ヘリウム低温ステージを用いて得られる約50K/minの冷却速度においても170K付近で一次元変調構造の出現が観察された。このことは前年度の液体窒素ステージによる観察結果を裏付けるものである。これらの実験結果を基に,一次元変調構造出現の物理的起源について検討を行った。その結果,変調構造の出現はイオンミリング法による試料作製時に導入された格子欠陥と構造相転移に伴う弾性定数のソフト化によるものとして説明される。
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