研究概要 |
溶融金属中に懸濁する非金属介在物を除去し,清浄度の高い金属素材を得ることは金属製造プロセスに求められている重要な課題である。本研究では溶融金属中微小介在物の流体力学的挙動を解明することを目的として,以下の2項目について基礎的研究を行った。 1.円管内流動水中の中空ガラス粒子の泳動 垂直円管内水流中の中空ガラス粒子(55〜135μm)の半径方向泳動に関する実験を行い,以下の結果を得た。(1)上昇流中の粒子は壁方向に泳動し壁に付着する。その壁付着効率ηは管の長さとともに大きくなり,液流速,粒子径,液粘度及び管径に依存した。管レイノルズ数Reが5000以上になるとηは急激に減少し,粒子は管内で均一に分散するようになる。(2)下降流中の粒子は壁から離れる傾向にあるが,Reが大となると均一に分散するようになる。(3)既往の揚力理論より軌道理論を用いて算出したηの計算値の実測値を表し得なかった。(4)流体の慣性効果を表す無次元パラメータβを既往の理論式に導入し,ηの実測値からβを求めた。このβは管Reおよび粒子Reで良く相関され,βの実験式が求められた。(5)実験式に基づく計算により,溶鋼中アルミナ粒子の壁付着による除去法の有効性を検討した。 2.攪拌下の微小粒子の凝集速度 攪拌槽を用いてラテックス(PSL)(2.85μm)およびアルミナ粒子(1.8,4.85μm)の水溶液中での乱流凝集速度を測定し、以下の結果を得た。(1)PSL粒子については急凝集条件下で凝集速度が既往の理論で表された。(2)アルミナ粒子については水溶液のPHおよび電解質濃度を種々変えて,急凝集条件を検討した。その結果,pH=8,C(NaCl)>0.1mol/lで急凝集となることが示された。(3)小径のアルミナ粒子の凝集速度は理論で表されたが,大径粒子では再分散の現象が認められた。
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