| 研究概要 |
水溶液からのZnーNi合金電析の際に,Znの平衡電位より貴な電位域において,Znの電析が連続的に起こるいわゆるZnのUnderpotential Deposition現象を見いだした。この現象は,従来報告されているような,異種金属上に数原子層のオ-ダで極めて過度的に金属が電析するUnderpotential Depositionとは異なり,電解開始から定常的に,また電解条件によりかなりの速度で起こることがわかった。さらに,この現象はより卑な金属であるZnが優先析出する異常型共析挙動を呈するZnーNi,ZnーFe,ZnーCoのZnー鉄族金属系においてのみ観察され,正常型共析であるZnーCuおよびZnーCd系においてはZnは平衡電位からその析出が始まった。これらUnderpotential領域で得られた電析物の化学状態をESCAにより測定したところ,NiのみならずZnのスペクトルも金属のそれと一致し,これら金属イオンは金属状態まで還元されていることがわかった。また,ZnのUnderpotential Depositionは浴温の上昇,塩化物の使用あるいは浴中のZnイオン濃度比の減少等の電解因子の変更によって,より顕著なものとなった。これら電解因子の変更は,Znの存在により分極した鉄族金属の析出が本来の析出電位まで復極させる作用も有するので,ZnのUnderpotential Deposition現象は共析金属の分極の大きさと密接に関連していることがわかった。
このZnー鉄族金属合金電析の際のZnのUnderpotential Deposition現象のメカニズムを,電析合金の構造あるいは従来報告されている単一金属電析のUnderpotential Deposition現象から検討したが,いずれも本研究において現れるZnの電析挙動を説明するのは困難であり,したがって,Znー鉄族金属系に固有の異常型共析現象およびその共析機構との関連において説明される必要があるものと思われた。
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