研究概要 |
最近,Fe基4元規則合金(FeCoAlGe,FeRuGaSi)薄膜が新しい軟磁性材料として注目され,またB2規則金属間化合物を形成するFeーAl合金に第3元素を添加して,新しいFe基耐熱材料を開発しようとする研究も報告されている.しかしながら,これらの研究では内部微細組織の観察が行われていない.材料の特性の多くは内部組織に敏感であり,その組織は主に状態図によって決定される。それ故状態図は新材料開発にとって有効な指針を示すことができる.本研究では,BCC型規則相の関与するFe基3元規則合金(FeーAlーCo,FeーSiーGe,FeーAlーGe)において相分離を観察し状態図を実験的に決定するとともに,BraggーWilliamsーGorskyモデルに基づく熱力学的な検討から状態図計算に必要な基礎デ-タを見積った. 823Kから973Kまでの温度における鉄コ-ナ-の等温断面状態図が実験的に調べられ,その結果,3元系を構成する各2元系にみられる2相分離がいずれの3元系においても観察されること,2相分離領域が磁気変態の影響により著しく拡張していること,などが明らかにされた.また,FeーSiーGe合金系では相分解プロセスが組織観察から検討され,そのプロセスは各規則相の自由エネルギ-の相対的な大小関係で説明可能であることがわかった.さらにFeーAlーCo合金では,磁気特性が測定され,その結果が状態図に基づいて組織学的に説明できること,2相分離が磁気特性の向上に寄与していること,が示され,材料特性を考える際の状態図の重要性が明らかにされた.また,状態図計算によりAlーCo,SiーGeおよびAlーGe原子間の相互作用エネルギ-が初めて見積られた.以上の結果は,新材料に関する応用研究で基礎的な情報を提供できるものと期待される.
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