研究概要 |
Y_2O_3を3mol%含む部分安定化ジルコニアおよびそれにAl_2O_3を添加した試料を常温圧粉ー焼結法で作製し,加熱・冷却の熱サイクルや等温時効処理を施こし,熱処理に伴う正方晶(T)【double half arrows】単斜晶(M)相変態(マルテンサイト変態)挙動を調べた。 1.T→M変態に伴って,イオン電導度が上昇することが判明した。 2.室温〜800℃間の加熱・冷却の熱サイクル数とともに,試料表面でのT→M変態量が増した。さらに,その変態は試料表面から内部へと進展し,その進展に伴って粒界割れを起こすことも判明した。As点(M→T変態温度)は熱サイクル数にかかわらずほば同じであったが,Ms点(T→M変態温度)は熱サイクルに伴って上昇した。この挙動は,割れによる自由表面が増加し、膨張を伴う変態に対する拘束力が減少したためと考えられる。したがって、T→M変態挙動にはT相粒界の結合力が大きく関与しているとみなされた。 3.Al_2O_3添加によりT→M変態は抑制された。特に,試料内部への変態の進展を著しく抑制することが判明した。 4.T→M変態は等温的にも起こり,その変態量(f)と時間(t)の関係は、JohnsonーMehl式(f=1ーexp(ーbt^n),b,nは定数)で表わされ,n値は約1であった。そのn値は、Al_2O_3添加に関わらずほぼ同じであったので,Al_2O_3添加によるT→M変態の抑制には,核生成の抑制に大きく関与していると推測された。 5.Al_2O_3添加試料の粒界破面には,Al_2O_3およびY_2O_3量がマドリックス中より多く,これらが粒界に偏析していると考えられる。これら偏析で粒界の結合力が増し、そのため、T→M変態の進展が抑制されたと考えられるが,この偏析現象の詳細については、今後の研究を待ちたい。
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