研究概要 |
近年,水銀を含むIIーVI族3元固溶半導体の代表的材料であるMCT(Hg_<1ーx> Cdx Te)及びMZT(Hg_<1ーx> Znx Te)は,10μm帯の赤外線検出器への応用はもとより,光通信用受素子及びγ矛検出素子等への応用と全組成範囲で注目されつつある。その結果,所望の組成の均一な単結晶を成長させる成長法が望ましいが,これまで検討されてこなかった。本研究ではバルク成長法のうちのTHM(Travelling Heater Method)に注目してこれに大幅な改良を加えることにより,所望な組成をもち且つ均一な組成の単結晶を得ようと試みた。主としてMCTに関して研究したが,成長法の特徴はMCTの構成成分であるCdと水銀の溶媒中での活量を制御し,ひいては成長バルクの組成も制御しようとするもので,LPE法に類似している。Cdの活量の制御はTe溶媒と接しているfeedとして用いたCdTe部の温度(すなわち,成長部温度)を制御することによって,また,水銀の活量はリザ-バとして用いた水銀室の温度(すなわち,その蒸気圧)を制御した。その結果,成長速度3mm/day以下において成長方向に均一な組成の結晶がx>0.60の組成の範囲で得られることが知られた。組成は水銀リザ-バ部の温度を変えても,成長部の温度を変えても変化するが,成長部温度,883K以上が再現性よく均一な組成の結晶を成長させるのに望ましいことがわかった。各種組成(x)をもつ成長単結晶及び塩素ド-プした単結晶のフォト・ルミネッセンスを4.2Kで測定し,x>0.8の範囲内でのバンド・キャップの組成依存性の結果が得られ,理論値と一致することが知られた。また,塩素ド-プ単結晶ではDーAペア発光が強くなり,電気的補償効果が予測されたが,電気抵抗はそれ程高くなく,補償がまだ不充分であることがわかった。
|