研究概要 |
フミン物質は環境汚染物質に作用してその物理的,化学的,生化学的プロセスに影響を及ぼし最終的運命に重要な応割を果していると考えられており基礎的なデ-タの必要性が高まっている。疎水性環境汚染物質はフミン物質の存在で水への溶解度が飛躍的に増加することがわかっている。本年は多環芳香族化合物ピレンと種々のフミン酸との相互作用を検討した〔実験〕海底堆積物から常法に従ってフミン酸,フルボ酸を抽出した。フルボ酸は灰分が多く昇化水素酸処理を行わないと使用できなかった。ピレンのフミン酸溶液への溶解度測定にはいわゆるフラスコ法を用い,水溶液に移動したピレンはジクロロメタンにより抽出して吸光光度法により定量した。ピレンのフミン酸への分配を測定する場合は,一定量のピレンとフミン酸溶液を良く振とう後,蛍光光度法によってピレンの蛍光の消光を利用した。〔結果と考察〕フミン酸水溶液によるピレンの溶解量はフミン酸の低濃度領域(〜50mg/l)ではフミン酸濃度と共に直線的に増加するのでその傾斜を溶解度係数Ksとした。その値は,BSー12(相模湾堆積物より抽出したフミン酸):3.6,SJー1(日本海)1.9,FSーE(フロ-レス海):1.8,Aldrich(市販)4.3,Fluka(市販)3.0×10^<ー8>mol/mgであった。また分配実験の係数khaは,BSー12:4.2,SJー1:10.4,FSーE:2.2,Aldrich:8.5,Fluka:8.1×10.4ml/gであった。FSーEはいずれの値も小さく,また市販の2フミン酸はKs,Khaいずれも似た値を示した。構造的にはBSー12は酸基が多く,また脂肪族性が高い。市販の2種は構造が類似しており芳香族性が高いといわれており,数値の類似性,ピレンとの相互作用の大きさがこれを裏付けている。溶解度の温度変化を調べると,いずれのフミン酸でも温度係数は正の値となり,吸着機構の寄与が小さいことがわかった。
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