接触法は高感度分析法として有用であるが、反応温度や試薬濃度を厳密に制御する必要がある。これらの制御を容易にするため細管内に反応試薬を流し微量試料溶液を注入して反応や測定を行う液体キャリヤ-型の流れ分析方式が使われているが、新たな問題が起こることが分かってきた(昭和63年度科学研究費研究成果参照)。そこで、その問題点のない新しい気体キャリヤ-型流れ分析方式の接触分析装置を開発した(同研究成果参照)。本研究では、この流れ分析方式の操作性をさらによくするために溶液注入部を自動化し、ヨウ化物イオンの接触定量に応用した。この定量には新しい反応系を用い、反応条件についても検討した。 1.自動接触分析装置の作製:これまで溶液をマイクロシリンジで手操作により注入したが(同研究成果参照)、注入部を自動化するために、装置上部に置いた各溶液溜から試薬溶液を装置内に重力落下させる注入部を開発した。この注入部による注入誤差はマイクロシリンジ注入と同程度の0.2%であった。本分析装置の3つの注入部(各150μl前後)に水と着色溶液を入れて繰り返し混合した結果、吸光度は約1%の誤差内で一致し、再現性よく混合できることが分かった。 2.クロルプロマジン(CP)ー過酸化水素反応を用いるヨウ化物イオンの定量:従来使われていた臭素酸塩の代わりに過酸化水素を使い、硫酸酸性溶液中でCPを酸化させることによって、一桁低いヨウ化物イオン濃度が定量できるようになった。本分析装置は撥水性のあるテフロン管を流路にしたが、CP溶液は濡れ易く、溶液の流れは他の水溶液に比べて遅くなった。しかし、混合の再現性には問題なかった。反応溶液中50ppbのヨウ化物イオンを繰り返し定量した結果、自動分析装置の検出下限は3ngとなり同じ反応条件でバッチ方式で定量した場合に比べ約1/50低い値が得られ、絶対感度の優れる本分析装置の特長が明らかになった。
|