研究概要 |
超臨界流体クロマトグラフィ(SFC)は,ガスクロマトグラフィ(GC)と液体クロマトグラフィ(LC)の中間の機能を有する分離手法として近年注目を集めるようになってきている。SFCではGCで分離困難な高沸点化合物の分離をLCよりも迅速に行うことができるため,特に高分子量化合物の高分解能分離に適していると考えられている。環境上重要な汚染物質である多環芳香族化合物(PAH)の分離はGCよりもLCが適していると考えられていたが、SFCの登場によりその分離はより容易になるものと期待されてきている。特にPAHの分子形状に基ずく選択的分離はその発ガン性,変異原性の解明のために重要である。これまでの研究から、ポリメリックオクタヂシル結合相(ODS)を固定相とする逆相LCによりかなり大きな分子平面性の認識が可能であることが明らかとなるにつれて、より選択性を高めるためには新しい固定相の開発が必要であると考えられた。そこで、SFCにおいてこのPAHの分子形状認識、特に平面性の選択性が顕著になると考えられたことから,液晶化学結合相やミクロデキストリン結合相など特異的な選択性をLCで示す固定相を用いてSFCでの保持挙動を測定した。比較のために最も一般的なODSを比較対象としてその平面認識能を検討した結果、1)SFCでの分子形状認識能はLCよりも大きくなる傾向がある。これは移動相が溶質ー固定相間の相互作用に寄与する度合が少ないため,固定相の性質がはっきりと表われるかである。2)移動相にモディファイア-を加えるとその挙動はLCに近くなる。3)ポリメリックODSと液晶化学結合相はよくにた平面認識能を示す。 本研究の結果からSFCを用いることでより選択性の高い分離がLC用の固定相を用いて期待できることが明らかとなった。
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