研究概要 |
酸化物の放射線検出器材料の母体として有望なGd_2SiO_5単結晶のフラックス育成を試みた。以下の結果を得た。 1.KFフラックスの高温溶液(1100℃)を徐令(5℃/h)して,約0.7mmに達するGd_2SiO_5単結晶を育成した。単結晶育成実験の調合物の最適組成は,Gd_2SiO_5(5mol%)ーKF(95mol%)であった。溶質濃度が5mol%よりも増加すると,生成する単結晶は小型化する傾向があり,30mol%では0.1mmにも満たない単結晶が得られた。生成した単結晶は,無色透明で六角厚板状の自形をもち,きわめて高品質であった。単結晶の密度は,6.69±0.03g/cm^3であった。KFはGd_2SiO_5単結晶育成の最適フラックスであることがわかった。大きな容量のるつぼを用いての実験では,より大型の単結晶を育成することができた。温度勾配法による実験では,Gd_2SiO_5単結晶を育成することができなかった。2.LiFフラックスの高温溶液(1100℃)を徐冷(5℃/h)しても,約0.4mmまでの大きさのGd_2SiO_5単結晶を育成できた。生成した単結晶は,無色透明で四角柱状の自形をもっていた。約0.2mm以上の単結晶は,明瞭な自形をもたないバルク状であることが多かった。単結晶の密度は,KFフラックスから成長した結晶のそれと同じであった。ところで,フラックス自身のLiFも白色半透明で直方体状の単結晶(最大約3.8mm)として成長してしまった。以上の結果によると,LiFフラックスのGd_2SiO_5単結晶育成の能力はKFよりも明らかに劣っていた。3.NaFフラックスの高温溶液(1100℃)を徐冷(5℃/h)したところ,目的単結晶は生成せずに,NaGdSiO_4単結晶が生成した。NaFはGd_2SiO_5単結晶を育成する能力をもたないフラックスであることがわかった。生成したNaGdSiO_4単結晶は,無色透明で柱状の自形をもち,最大約6.0mmであった。この結晶の生成は,溶質とフラックスの化学反応の結果である。4.Li_2OーMoO_3,Na_2OーMoO_3およびK_2OーMoO_3フラックスの高温溶液を徐冷しても,目的の単結晶は生成しなかった。
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