研究概要 |
ダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素(cBN)からなる複合焼結体は工具やヒ-トシンク基板への応用が期待される.本研究ではhBN粉末にダイヤモンド種子結晶を添加し,hBNからcBNへの誘発転移反応を利用する反応焼結法により,CNBマトリックス中にダイヤモンドが均一に分散した複合焼結体を作製することを目的としている.2年間にわたり,反応焼結条件の最適化と焼結体の組織制御および特性評価,さらに揮発性触媒の効果について研究し,次の成果を得た. 1)反応焼結条件の最適化:hBN粉末にダイヤモンド種子粉末を0ー90wt%配合し,これに各種揮発性触媒を添加し,超高圧装置を用いて,6ー7.5GPa,1300ー1700℃,0ー30minの条件で高圧高温処理した.その結果,cBNの最適焼結条件は7GPa,1700℃,15ー30minであることで判明した. 2)焼結体の組織制御と特性評価:hBNからcBNへの転換率は,ダイヤモンド種子の粒径の減少および添加量の増加に伴い向上した.焼結体組織は種子粒径の減少とともに微細化した.焼結体の硬度はダイヤモンド添加量の増加とともに増加するが,cBNーダイヤモンド粒間結合が比較的弱いので焼結体の靭性が低下した.30wt%ダイヤモンド添加(平均粒径:1.5μm)の場合,hBNからcBNほの転換率が99%,相対密度99%,微小硬度5100kg/mm^2以上のcBNーダイヤモンド系複合焼結体が得られた. 3)揮発性触媒の効果:上記の最適条件で,揮発性触媒として0ー30wt%のNH_4NO_3,NH_4Cl,NH_2NH_2を添加して触媒効果を比較した.NH_4NO_3およびNH_4Clを過剰に添加すると触媒中の非アンモニウム基による焼結体特性の劣化が認められた.cBNへの転換に要する活性化エネルギ-は,いずれの場合も200ー230kj/molであり,触媒無添加の場合に比べてかなり少さかった.以上から,高温高圧下で分解生成した触媒中のNHx成分がhBNからcBNへの転換に必要な結合の切断・再結合に寄与しているものと考えられた.
|