研究概要 |
セラミックス微粒子の形態や表面状態などは微粒子の製法および生成条件に依存し変化し,それによって物性も大きく異る。これを利用すれば,組織構造の積極的な制御・修飾によって多層構造もしくは傾斜型微細構造を有するセラミックス微粒子を作成することができる。本研究は,このようなセラミックス微粒子を超音波噴霧熱分解法で作成し,その作成条件と微細構造との関係を明かにすることを目的として行った。 まず,ヘマタイト粒子を硝酸鉄(III)溶液の噴霧熱分解により調製した。添加剤無しの水溶液からは表面の滑らかな粒子が得られ,大きめの粒子は厚い殻と中心部に空洞をもち,また平均粒径程度の粒子は内部まで緻密であった。グリセリンなどの添加剤を含む溶液からは薄い殻の中空球が得られ易く,分解ガスによって膨張の後収縮したため表面には凹凸が観察された。 次に,酢酸カルシウムおよび乳酸カルシウムとリン酸二水素アンモニウム混合水溶液を超音波噴霧して,アパタイト微粒子を作成した。原料・添加物の有無により粒子の表面形態は変化したが,全体として噴霧時の焼成が進む系ほど表面は粗であった。粒径は約0.5μm程度であった。溶液濃度と噴霧粒子径との関係から,噴霧液滴径は溶液に依存せずほぼ一定であることが分かった。 乳酸カルシウムとリン酸二水素アンモニウムの混合溶液および硝酸鉄(III)水溶液を所定量混合し,モル比HAP/ヘマタイト=1/0.5〜1/9の複合微粒子を噴霧熱分解により作成した。粒径は0.2〜0.6μmの狭い範囲にあり,HAPの混合比が大きいと表面はシワが多く,ヘマタイトの割合が大きいと表面は滑らかであった。やや大きめの粒子(〜0.8μm)は殻ー核二層構造をしており,そのような複合構造粒子が生成する機構は,炉内で滴表面が加熱されそれによってCaーEDTA結合が切断されてアパタイトが表面より生成されることであると推測した。
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