研究概要 |
ハロゲン化アルカリの代表例としてKClを,また均一な円筒型細孔(半径20A^゚)をもつ多孔質ガラスを試料として用いた。表面状熊が良くわかっている試料に対する水蒸気吸着等温線を正確に測定し,その吸着機構を吟味した。さらに水蒸気の吸着状態のわかった吸着層の相変化温度をClausiusーClapeyronプロット,DSC測定より決定した。相変化温度の変動から,吸着多分子層の構造と物性におよぼす影響を検討し次のような結果を得た。 (1)KClは再結晶で得た均一な立方体の粉体で表面は(100)面で覆われている。水蒸気吸着において,表面陰イオンが重用な役割を果していることがわかった。すなわち表面上の陰イオン2個に対し,1個の割合で水分子は吸着していることを明らかにした。(2)一方多孔質ガラスでは,表面水酸基が重要な役割を果していることを明らかにした。(3)表面水酸基には,isoタイプ,gemタイプ,水素結合タイプの三種類がある。シラン類,Grignard試薬を用いて,水酸基をこれらのタイプに分類することが可能なことを示した。(4)多孔質ガラスを加熱することにより表面水酸基量やタイプをコントロ-ルすることが可能である。800℃で加熱脱気した試料の表面水酸基量は,約0.8OH/1nm^2でisoタイプのみの水酸基となることが,また500℃加熱脱気では,isoタイプとgemタイプはおよそ50%づつ存在することを明らかにした。(5)180,500,800℃加熱試料の表面に多分子層吸着させた水膜の相変化温度は,表面水酸基が多い試料ほど相変化温度は低く,固体表面の極性サイトの影響が大であることを明らかにした。
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