研究概要 |
(1)スチレンの酸素酸化におけるμ-オキソ三核鉄(III)カルボキシラート錯体、[Fe_3 ^<III>O(O_2CR)_6(H_2O)_3]^+のカルボキシラート配位子の影響を調べた。酸化活性は溶解する錯体間には差はないが、エポキシド選択性はカルボン酸のpKa値が4付近のものが高かった。安息香酸カルボン酸のHammett値が0からやや負のカルボキシラート配位子が最高のエポキシド選択性(28%)を与えることが分かった。(2)μ-オキソ三核混合原子価金属アセテート錯体によるスチレンの酸化では、Fe_2 ^<III>Fe ^<II>、Co_2 ^<III>Co ^<II>がホモ原子価錯体に比べ活性、エポキシド選択性ともに優れていた。同様にV_2 ^<IV>V ^<III>錯体も活性、選択性ともに高かった。しかし、Mn_2 ^<III>Mn ^<II>は効果がなかった。3価の二核鉄に2価の異種金属(Mn,Co,Ni,Zn,Mg)を混合した三核金属アセテート錯体の中では、Zn錯体が活性、選択性ともに優れており、85℃で選択性35%を与えた。Mn混合錯体には全く活性がなかった。Cr混合錯体では、Cr_2 ^<III>Fe ^<II>錯体がFe_2 ^<III>Zn ^<II>錯体に匹敵する活性、選択性を示した。(3)室温では酸化は遅く、通常70℃以上の温度域で反応が行われる必要がある。反応温度とともに酸化は加速されるが、95℃で速度は一定になる。低温では錯体間に活性、選択性に差があるが、95℃で差が消失する。エポキシド選択性は85-95℃の範囲で最高が得られた。酸素圧を低下すると、酸化速度は低下するが、エポキシド選択性が向上した。Fe_2 ^<III>Zn ^<II>錯体では酸素圧が13kpa以下ではエポキシド選択性が50%を越えた。(4)Fe_2 ^<III>M ^<II>O(OAc)_6(H_2O)_3(M=Fe,Mg,Zn,Mn,Co,Ni)をシリカに担持し、焼成して3金属が集合したリシカ担持酸化物触媒(担持率Fe基準で7.8wt%)を調製することを図り、1-ブテンの脱水素(573K)によるブタジエン合成を試みた。MがFeに比べ、活性が高いのはMn、Znで、Co,Niでは活性が変わらず、Mgでは全く活性を示さなかった。ブタジエン生成の選択率は、Zn(71%)が最高で、Fe(68%)、Co(67%)、Ni(53%)であった。
|