研究概要 |
研究目的: 1。窒素架橋ヌクレオシド類の合成と反応ープリンヌクレオシド類への拡張。 2。一般有機化学に立脚する糖部変換の開発ー特に2',3'ージデヒドロヌクレオシド類の化学の開発と生理活性物質の合成。 研究実績概要: 1。従来,窒素架橋プリンヌクレオシドの合成においては,私が以前に報告したヒドラゾ架橋(2原子架橋)の例を除けば,8,3'ーNー架橋体の合成の前例がない。今回,私がモノアルキルアミン類と3'ーTPSー8ーブロモアデノシンの反応を精査した結果,全くユニ-クな反応経路が見つかった。即ち,2'ーヒドロキシルアニオンから出発する1,2ーヒドリドシフトを経て2'ーケト体が生じ,8ーイミノ基がケトンを攻撃して通常は不安定なヘミアセタ-ル型の8,2'ーN架橋体を生じる一般的経路であり,これは更なる化学変換の可能性を示唆する極めて新規な側面である。 2。従来,ジデヒドロヌクレオシド類の有機化学的開発は極めて遅れている。近年,チミジン同族体が抗エイズあるいは抗ヴィ-ルス剤として脚光を浴びているので,それらに到る有用な合成中間体を確保するべく,2',3'ージデオキシチミジンと広範囲の求電子剤との反応を試みた結果,これまで内外で成功しなかった2,2'ーアンヒドロ化に初めて成功し,更に2',3'ーアンヒドロ化にも成功した。後者は特に重要な求電子的中間体であり,それから幾つかの生理活性が期待される物質が誘導された。2,2'ーアンヒドロ体の反応性は更に検討中(平成3年日本化学会春期年会で発表予定)。
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