研究概要 |
多環式化合物は天然物合成や新機能性物質合成における重要な分子骨格であり、斬新な合成法の開発、新規な官能基の導入などは、ますますその必要性が高まっている。本研究は、遷移金属錯体を用いた分子内環化反応を利用し、多環状化合物の効率的な合成法を開発することを目的としている。 本年度は、次の2点について、新しい知見を得ることができた。 1.ビスジエンの分子内環状二量化 両末端に1,3ージエン骨格を有するビスジエンのニッケル触媒ハイドロシレ-ション(ケイ素ー水素結合の付加)およびパラジウム触媒ダブルシレ-ション(ケイ素ーケイ素結合の付加)により、それぞれ、アリルシラン骨格を一つおよび二つ有する、シクロペンタン環化合物が得られることがわかった。来年度以降、これらの生成物を用いて、ケイ素官能基の変換、多環状化合物の構築などに取り組みたい。 2.ジアセチレンとシリレンとの環化反応 ジヒドロジシランとニッケル錯体との相互作用で発生するシリレン活性種とジアセチレンとの反応により、多環状シラシクロペンタジエンの合成法を確立した。また、シリルアセチレンとの反応により、2,5ー位に官能性シリル基を有するシラシクロペンタジエンの合成にも成功した。これらの化合物から新しい骨格、官能基を有する高分子化合物の合成を行なっている。 以上、本年度計画した研究は、ほぼ所期の目的を達成できた。
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