研究概要 |
触媒量のジフェニルジテルリド(5mol%)存在下,エタノ-ル中でNaBH_4で脂肪族ニトロ化合物を還元すると,室温5〜20時間の反応で対応するオキシムが生成することを見出した。同条件下で芳香族ニトロ化合物を還元すると,アゾキシおよびアゾ化合物が生成することを既に著者らは見出しているが,これらの反応はいずれも中間にニトロソ化合物(RーNO,ArーNO)を通って進行することが明らかとなった。オキシム生成反応は対応するケトンやアルコ-ルの副成を伴うが,その選択性は脂肪族ニトロ化合物の種類に大きく依存することが明らかとなった。例えば,ニトロシクロヘキサンや6ーニトロウンデカンなどの第二ニトロ化合物や1ーニトロデカンのような第一ニトロ化合物ではオキシムの生成収率は15〜42%であるのに対し,2ーアリ-ルー1ーニトラエタンからは対応するオキシムが73〜87%の収率で生成した。不飽和ニトロ化合物(1ーニトロシクロヘキセン,βーニトロスチレン)からは対応する飽和ニトロ化合物から得られるのと同じオキシムがほぼ同程度の収率で得られたこと,また,得られるオキシムの異性体比(EとZの比率)がほぼ同じであることなどから,NO_2のNOへの還元の前に二重結合がアルカンに還元を受けるものであることを明らかにした。 反応機構端の立場からは2,4,6ートリ-tーブチルニトロベンゼンのこの条件下における還元を行った。期待した対応するニトロソ化合物は全く生成せず,出発原料がすべて回収されたことより,そのような還元を行うとして知られている一電子移動の機構で進むのではなく,ベンゼンテルロラ-トイオン(C_6H_5Te^ー)のニトロ基窒素への求核攻撃を含むものであることを明らかにした。
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