研究概要 |
(1)パン酵母菌を破砕した粗酵素液を用いる不斉還元 基質として脂肪族δーケト酸を用いて粗酵素液に補酵素としてNADPHを加えて還元生成物を製取した。これを菌体をそのまま用いた還元の結果と比較したところ,どちらも立体配置はRで光学純度は>99%eeであり,収率でも大きい差異は認められなかった。しかし物質収支から判断して菌体内では基質が損失していることが推定された。また細胞壁(膜)にたいする基質あるいは生成物の透過性が重要であるとの結論は得られなかった。 (2)金属塩添加の効果 粗酵素液の酵素活性が種々の金属塩によって影響されることから,菌体を用いる還元にたいして金属塩添加の効果を調べたところ,MnCl_2によって還元収率が64%から84〜89%へ増加する基質があることがわかった。 (3)多官能性β,δージケト酸のパン酵母による不斉還元 δ位のケトンカルボニル基が還元されたものが主生成物であり,これはβ位がさらに還元されてβ,δージオ-ルにならないことがわかった。これにたいしてβ位のカルボニル基は比較的還元速度が遅い上に,さらにδ位のカルボニル基が還元されてジオ-ル体を生成し易いことがわかった。どれもすべて立体配置はRで,>99%eeであった。βーケトδーラクトンとβーヒドロキシδーラクトンとして単離精製できた。 (4)βークロローγーケト酸のパン酵母による不斉還元 RCOCHClCH_2CO_2Hにおいて,R=CH_3ではS配置,収率50〜60%,ジアステレオマ-比1:1,R=C_2H_5ではS,68%ee,〜10%,R=γーC_0H_7ではR,61%ee,20%,R=nーC_4H_9〜nーC_6H_<13>ではR,>98%ee,〜20%であった。低収率の主たる原因はClのOHによる置換と判明。
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