研究概要 |
シアン化ビニリデン系共重合体の中には非晶状態でも実用上十分な圧電性を示すものとほとんど圧電性を示さないものとがあるが,非晶であるがためにX線構造解析法は無力であり,固体状態での構造・形態についての情報が不足しており,従って圧電性発現の機構については不明な点が多い。この研究ではシアン化ビニリデン系共重合体の圧電性発現の機構を解明することを目的として,数種のシアン化ビニリデン系共重合体の微細構造(共重合体連鎖構造,立体規則構造)を主に溶液用高分解能NMRにより,また固体状態でのコンフォメ-ションと動的性質を主に固体高分解能炭素ー13NMRにより,さらに熱的性質を示差走査熱量計により調べ、これらと圧電性との関係を検討し,さらに共重合体鎖の屈曲性と動的性質を分子力場計算により調べた。 検討した数種の共重合体は圧電活性の有無または大小によらずいずれも交互性の極めて高い連鎖より成るアタクチック共重合体であった。しかし,固体高分解能炭素ー13NMRによる磁気緩和時間と示差走査熱量分析によるエンタルピ-緩和時間の測定および分子力場計算から,圧電活性の高い共重合体ほど,鎖屈曲性が高いことを認めた。鎖屈曲性が高いということは,分極処理の際にシアノ基双極子を空間的に揃え易い事を意味しており,高い圧電性を得るのには有利な性質である。
|