研究概要 |
可溶性の前駆体高分子を経由する主鎖π共役高分子調製の手法をポリアリ-レンビニレン系に適用し、π共役系が高度に発達した薄膜材料を実現する上での問題点を明かにし、その解決法を提示することを目的とし、研究を実施した。主な実施事項と成果は下記の通りである。 (1)4種のポリアリ-レンビニレン(PAV)の高品質の薄膜を合成する手法を確立した。4種のPAVの中で、ポリ(pーフェニレンビニレン)、ポリ(2,5ージメトキンー1,4ーフェニレンビニレン)、ポリ(2,5ーチエニレンビニレン)については既に合成手法の蓄積がある程度あったが、ポリ(2,5ーフリレンビニレン)は本研究で新たに高品質の薄膜を合成する手法を確立した。 (2)化学的に純度が高い前駆体高分子を合成し、酸触媒の存在下で共役高分子への変換反応を制御することで、共役連鎖の発達の程度が異なる試料を系統的に準備できるようになり、共役連鎖長の研究を進める上で有力な手段を得ることができた。PAV薄膜の紫外ー可視吸収スペクトル、赤外吸収スペクトルを調べることが共役連鎖長を議論するために有効であることが分かった。特に紫外ー可視スペクトルは平均共役連鎖長を反映し、一方赤外スペクトルは共役連鎖の長さを支配している主鎖上の構造欠陥部の情報を与える。 (3)PAVのモデル化合物であるオリゴマ-試料を用い、スペクトルを解析した結果、ビニレン鎖中のシスビニレン結合の存在が明らかとなり、この結合が共役連鎖を切断する構造欠陥のひとつであることが分かった。 (4)屈曲性の前駆体高分子鎖から直線状のπ共役鎖に変換する際に高分子鎖を引き延ばすことの重要性が明確になったので、前駆体から共役鎖への変換過程で試料に一軸延伸を加えたことを試み、確かに高分子鎖を直線状に伸長できれば構造欠陥が減少することを確かめた。
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